
いくつか見る機会があったけど私のチョイスしたドラマ
(一期に2本くらいしかまともに観られないのでかなり厳選する)に入ってなかったのもある。
ただ何かの情報で身体能力が高くてすごいのと
今期の大河「べらぼう」観てえらいかっこいい(好みじゃないけど)人やあ〜と
楽しみが一つ増えたくらいしか思ってなかった。
みなさんがいっぱい感想をSNSに載せていってるのを見ながら
「感動する」「泣いた」「心が震えた」「何回も観てる」
なんだか冷めていく自分がいて
しまった早めに観にいくべきだったなと苦笑。
ひねくれもんには困ったもんです^^;;
友人は5回観にいったそうだ。
目の肥えた彼女がそんだけ観てるってことは絶対外れないに違いない。
やっといく気になって観にいったのはお盆の最終日の朝一番。
それでも会場はいっぱいだった。
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観終わってまず思ったのは美しさにあてられた「渇き」と
「しんどい」だった。
こんなの何度も観れるなんて信じられない。
梨園という特別な世界は「血統」「男」が何より大事で
その中での芸の道なんてキツイことこの上ない。
私はちょっと時間あけないともう一度鑑賞しようなんて思えない。
びっくりしたのは横浜流星さんだ。
あんな男でしかない体、顔であの色気はなんなんだ。
踊りがかわいい。ボンならではの大らかな華やかさ。
最後までいいとこのボンだった。
ボンならではの悩み、女に救われて支えられて立ち直るのも
結果的にいいとこ持っていくのも
ああ、ボンボンていいよな、とか思えてしまう。
対して吉沢亮さんは期待通りというより超える、やはり吉沢亮さんなのだった。
正直これまでのいろんな映画も絶対期待できないと思いながら全部期待を上回った。
今回はもう吉沢亮さんではなく、本当に喜久雄だった。
つらい、しんどい、こんな生き方をしなけりゃいけないなら
踊りなんてやめてしまえばいいのに
でもできない、こうしか生きられない。これしかない。つらい。苦しい。
それでも踊ってる時の表情は嬉しいとかそんな簡単なものではなくて
「生きてる」というしかない。
「生きる」ことは苦しくてつらくて
でもそこに存在する、ということが自分自身の糧となる。
簡単に言ってしまうと
いろんな道でこういう経験を大なり小なりしてる人はいる。
だからこそみなさん感動するんだと思う。
私の愛読書に、永六輔さんの「職人」という本があって、
その一節に
「何かに感動するということは
知らないことを初めて知って感動するのではなく
どこかで自分も知ってたり考えていたことと
思わぬところで出くわすとドキリとするのだ」
という職人の言葉があって
きっと私たちは大なり小なり喜久雄の踊らずにはいられない生き様を
どこかで自覚していて
それが自分の心の中の琴線に触れて涙が出るのだろうと思う。
だからあれは極論で言うと
自分の話になるのではないかと思う。
………あんなにも壮絶ではないにしろ、だ。
ただ、私の観終わった後のしんどさは
恥ずかしさに直結してる気がする。
それこそぬるく流されるように生きている自分が情けなくて
もっともっとできるはずの努力や精進を怠った自分が恥ずかしくて
観ていてしんどいのだわ。
ほんとに
生ぬるい生き方を反省してしまいそうになる。
………かと言ってあんなにストイックに生きたいわけじゃないので
私が一番恐ろしいなと思ったのは「万菊」さん。
田中泯さん、いろんな役柄を見てきて素敵な役者さんだとずっと思ってたけど
あれは妖怪だった。
見た目じゃなくて、役どころなんだろうけど
あの存在感は本当にゾッとした。
ずいぶん昔に「鷺娘」坂東玉三郎で観た。
確かテレビかなんかだったと思うけど
並べちゃダメだろうけど
あの時の心掴まれる美しさと
人ではないような怖さに少し似てるように気がする。
見た目ババアにしか見えないのに
なんだろうあの「人でなさ」は。
最後布団に横になり
ここには美しいものは何もないことが
唯一の安息のように聞こえる。
それは踊れないからこそで。
この人も舞台でしか生きられない人なんだと思い知らされる。
「美しい」
この言葉の裏にどれだけの恐ろしさがいるんだろう。全編を通じてそれを思った。
喜久雄が観たかった景色を彼が観れてよかった。
いろんなものをそぎ落として
唯一残った望みだったろうから。
そしてもう一つ思ったこと
女はしたたかで強い。
寺島しのぶさん自身が梨園の家に育った人なので
「血統」と「男」を散々知ってきた人なんだと思うからこそ
彼女のセリフはいちいち刺さる。
そして他の女たちも
どうしようもない性としたたかさ。
所詮あんたらはみんな
女の股から出てきたもんにしか過ぎないんだと
生きることにおいての強さは女の方が上だと
しみじみ思った。
もう一度見るには時間が欲しい^^;;
そして心が落ち着いた頃にもう一度見たい。
きっと今度もしんどいだろうけど
あの美しさはクセになるだろうな。
俳優さんの努力はあんまり褒めちゃいけないんだそうだけど
踊りは本当に素晴らしかった俳優根性に頭がさがる。
だからと言って努力を褒めてもきっと嬉しくはないんじゃなかろうか。
だからとにかく
濃密な時間をもらったことを本当に製作陣に感謝したい。
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by joribox
| 2025-09-01 12:13
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